「音楽に国境はない」っていうけど…
「音楽に国境はない」っていうけど…

「音楽に国境はない」っていうけど…

国際的な慈善コンサートなんかで、成功に酔いしれたミュージシャンが顔を紅潮させて、 「音楽で繋がろう! 音楽に国境はないんだ!」 なんて絶叫する光景を目にすることがあります。 世界中、言葉が通じなくとも食事を共にし、酒を酌み交わせば仲良くなれるし、基本的なルールの理解があればスポーツやダンスを通じて友情を育むこともできます。音楽もその意味では同じ役割を果たすことができるわけです。 「そんな当たり前のことを何で知ったかぶって言うわけ?」 とお叱りを受ける前に、今回はサン=サーンス(Charles Camille Saint-Saëns, 1835 - 1921)の交響曲第3番ハ短調作品78「オルガ…

とお叱りを受ける前に、今回はサン=サーンス( Charles Camille Saint-Saëns, 1835 - 1921)の交響曲第3番ハ短調作品78「オルガン付き」(Symphonie n° 3 ut mineur op.78, avec orgue )から第2楽章の後半を聴いてみていただきたいと思います。音が悪くて恐縮ですが、ちょっとこれを超える演奏が見当たらなかったのでお許しください。演奏は ジャン=クロード・カサドシュ(Jean-Claude Casadesus, 1935 - )指揮のリール国立管弦楽団(L'Orchestre National de Lille [ONL])です。

カサドシュは、パリ国立歌劇場管弦楽団(Orchestre de l'Opéra national de Paris)、パリ・オペラ=コミック座管弦楽団(Théâtre national de l'Opéra-Comique )の常任指揮者を歴任した後、1976年にリール国立管弦楽団を創設し、2016に現在のアレクサンドル・ブロッホ( Alexandre Bloch )に引き継ぐまでの40年間にわたって音楽監督を務めたフランスを代表する指揮者です 。

さて、同じ曲を今度はヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan, 1908 - 1989)指揮のベルリン・フィル(Berliner Philharmoniker)で聴いてみてください。カラヤンとベルリン・フィルについてはまた別の機会に触れたいと思いますが、前世紀のドイツ語圏にあってはカール・ベーム(Karl Böhm, 1894 - 1981)指揮のウィーン・フィル(Wiener Philharmoniker)と双璧をなす大指揮者でした。

こうしたことは他の演奏者の比較においても如実に現れます。オルガンならヘルムート・ヴァルヒャ(Helmut Walcha, 1907 - 1991)とマリー・クレール・アラン(Marie-Claire Alain, 1926 - 2013)のバッハ。歌曲ならスゼー(Gérard Souzay, 1918- 2004)とフィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau, 1925 - 2012)のフォーレ。イ・ムジチ(I Musici)とシュツットガルト室内管弦楽団(Stuttgarter Kammerorchester)のヴィヴァルディなどなど、挙げればキリがありません。

ピアニストでいえば、前者はサンソン・フランソワ(Samson François, 1924 - 1970)のショパンであり、後者はグレン・グールド(Glenn Herbert Gould, 1932 - 1982)のバッハでしょうか。