立原道造 「夏花の歌」(詩集『萱草に寄す』より)
立原道造 「夏花の歌」(詩集『萱草に寄す』より)

立原道造 「夏花の歌」(詩集『萱草に寄す』より)

夏花の歌 その一空と牧場のあひだから ひとつの雲が湧きおこり小川の水面に かげをおとす水の底には ひとつの魚が身をくねらせて 日に光るそれはあの日の夏のこと!いつの日にか もう返らない夢のひととき黙つた僕らは 足に藻草をからませてふたつの

人に 遊びぢやない 暇つぶしぢやない あなたが私に会ひに来る ――画もかかず、本も読まず、仕事もせず―― そして二日でも、三日でも 笑ひ、戯れ、飛びはね、又抱き さんざ時間をちぢめ 数日を一瞬に果す ああ、けれども .

萩原朔太郎 「中學の校庭」(詩集『純情小曲集』より)

中學の校庭 われの中學にありたる日は 艶なまめく情熱になやみたり いかりて書物をなげすて ひとり校庭の草に寢ころび居しが なにものの哀傷ぞ はるかに青きを飛びさり 天日てんじつ直射して熱く帽子に照りぬ。 作者と作品に.

金子みすゞ 「なぞ」「蝉のおべべ」「蓮と鶏」「このみち」(『金子みすゞ全集』より)

なぞ なぞなぞなァに、 たくさんあって、とれないものなァに。 青い海の青い水、 それはすくえば青かない。 なぞなぞなァに、 なんにもなくって、とれるものなァに。 夏の昼の小さい風、 それは、団扇うちわです.

金子みすゞ 「朝顔の蔓」「たもと」「向日葵(ひまわり)」(『金子みすゞ全集』より)

朝顔の蔓 垣がひくうて 朝顔は、 どこへすがろと さがしてる。 西もひがしも みんなみて、 さがしあぐねて かんがえる。 それでも お日さまこいしゅうて、 きょうも一寸 また伸びる。 伸びろ、朝顔、 .

山村暮鳥 「西瓜の詩」(詩集『雲』より)

西瓜の詩 農家のまひるは ひつそりと 西瓜のるすばんだ 大でつかい奴がごろんと一つ 座敷のまんなかにころがつてゐる おい、泥棒がへえるぞ わたしが西瓜だつたら どうして噴出さずにゐられたらう おなじく 座敷のまんなか.