井伏鱒二「駅前旅館」高度経済成長の時代に友情と男の矜持を語る番頭の人間的な魅力
井伏鱒二「駅前旅館」高度経済成長の時代に友情と男の矜持を語る番頭の人間的な魅力

井伏鱒二「駅前旅館」高度経済成長の時代に友情と男の矜持を語る番頭の人間的な魅力

井伏鱒二「駅前旅館」読了。 本作「駅前旅館」は、 1956年(昭和31年)9月から1957年(昭和32年)9月まで『新潮

そこへ、おかみさんが帰って来て、「あら高沢さん、いやですわ。駄目です、いけません」と、招き猫を奪って胸に抱きしめました。それが、いかにも艶なるものに見え、また、どうにもナフタリン臭い恰好のようにも見えました。で、高沢が図に乗って、 「春の夜や、いやです駄目です、いけません」 と即吟して、やがてその意を解したおかみさんに、「ふふふふ」と恥ずかしそうな含み笑いをさせたことでございます」(井伏鱒二「駅前旅館」)

「四度も五度も通っているてえと、友達づきあいになって、もはや口説けねえ。 お前さんのやりかたは、お前さんの青春のかけらというやつを、まるで味噌漬けにしてるようなもんだ。 だが、俺の見るところじゃあ、十分すぎるほど脈があるね」(井伏鱒二「駅前旅館」)

「あたし字が下手くそだから、履歴書なんか書けないわ。 あたしの気持が通じないのと同じように、いくらじれったくても仕様がないのね。 まるで宿命を背負っているみたい」(井伏鱒二「駅前旅館」)

新潮文庫の解説を担当した河上徹太郎は、 「私はしばしば井伏鱒二御当人と酒を置いて歓談している時のようないい気持になる」 と書いている。

書名:駅前旅館 著者:井伏鱒二 発行:2007/11/01 出版社:新潮文庫