ISO12100リスクアセスメントによる機械類の制限の決定や危険源の同定の具体的なやり方とコツ
こんにちは!ISO12100 リスクアセスメント機械類の制限の決定と危険源の同定について話してみたいと思います。ISO12100 は、機械類の安全性に関する国際規格です。この規格は、機械類の設計者や製造者が、機械類に関連する危険を評価し、適切な安全対策を講じるための一般的な原則と方法論を提供しています。ISO12100 は、機械類の安全性に関する他の国際規格や技術仕様との整合性を確保するための基礎的な規格でもあります。ISO12100 は、機械類の安全性に関するリスク評価とリスク低減のプロセスを定義しています。このプロセスは、以下の3つの段階からなります。制限の決定、危険源の同定、リスク評価とリスク低減。このブログでは、最初の2 つの段階について、わかり易く説明します。機械類の制限の決定とは、機械の使用方法や条件、動作範囲や寿命などを明確にすることです。これは、リスクアセスメントを行う前提となる重要なステップです。例えば、機械はどんな人が使うのか、どんな目的で使うのか、どんな環境で使うのか、どんな材料を加工するのか、どんなメンテナンスが必要なのかなどを考えます。また、意図しない使い方や誤動作が起こる可能性も考慮します。制限の決定とは、機械類の使用目的や使用条件を明確にすることです。制限の決定は、リスク評価とリスク低減の基準となります。制限の決定には、以下の要素が含まれます。機械類の名称や型式、機械類の用途や機能、機械類が設置される場所や環境、機械類を操作する人員や対象物、機械類の使用期間や使用頻度 機械類に関連する法律や規制、制限の決定を行う際には、以下の点に注意する必要があります。制限は、現実的で合理的であること、制限は、文書化されていること、制限は、必要に応じて見直されること、危険源の同定とは、機械に関連するすべての危険な場所や状況を見つけ出すことです。危険源とは、人に危害を与える可能性のあるものです。例えば、機械的な切断や挟み込み、電気的なショックや火災、熱的なやけどや凍傷、騒音や振動による聴覚障害やストレス、有害物質による中毒やアレルギー、人間工学的に不適切な姿勢や操作などが危険源になります。危険源は、機械のライフサイクル(機械が製造者の工場を出てから廃棄まで)のすべての段階で発生する可能性があります。危険源の同定は、リスク評価とリスク低減の対象となります。危険源の同定には、以下の手順が含まれます。機械類を各部分や各動作に分解する、各部分や各動作が発生させる可能性のある危険を列挙する 列挙した危険が制限に違反するかどうか判断する、制限に違反する危険を危険源として記録する、危険源の同定を行う際には、以下の点に注意する必要があります。危険源は、具体的で明確であること、危険源は、文書化されていること、危険源は、必要に応じて見直されること
ISO 12100 は、機械の安全性を確保するための国際規格です。機械の設計者は、この規格に従ってリスクアセスメントとリスク低減のプロセスを実施する必要があります。リスクアセスメントとは、機械のライフサイクルのすべての段階で、危険源や危害を特定し、リスクを見積り、評価することです。リスク低減とは、リスクを許容可能なレベルまで減らすための方策を選択し、実施することです。ISO 12100 は、リスクアセスメントとリスク低減の原則や方法論を提供するとともに、基本用語や定義も規定しています。ISO 12100 は、タイプA 規格と呼ばれる基本安全規格であり、他のタイプB やタイプC の安全規格の策定にも基礎となります。ISO 12100 は、機械の安全性に関する知識や経験に基づいて作られた規格であり、機械の設計者にとって有用なガイドラインです。
ISO 12100 リスクアセスメントについてはこちらの記事をご覧ください
ISO12100.comISO/IEC GUIDE 51安全の定義「安全とは許容不可能なリスクがないこと」とリスクゼロはありえない こんにちは! 今日はISO/IEC GUIDE 51という国際規格についてお話ししたいと思います。 ISO/IEC GUIDE 51は、製品やシステムの安全性に関する国際的なガイドラインです。こ…
ISO12100.com リスクアセスメントの手順- 本質安全設計 (機械設計上の対策(危険源の除去や隔離))
- 安全防護、付加保護方策(安全装置や保護ガードなどの技術的な対策)
- 使用上の情報(機械に警告標識、取り扱い説明書など)
機械の制限の決定
ISO 12100 での「機械の制限の決定」は、リスクアセスメントの最初の手順であり、対象となる機械の仕様や条件を明確にすることが重要です。機械の危険な場所を見つけて安全にするためには、まず機械が何をするか、誰が使うか、どこで使うか、何を作るかなどを決めることから始めます。これは、機械の目的や特徴をはっきりさせることが大切だからです。機械の制限は、以下の4 つから構成されています。
機械の制限の種類
使用上の制限使用上の制限とは、機械の設計や使用に必要な情報のことです。1. 機械が壊れたらどうするか 2. 機械を使う人の特徴 3. 機械を使う人のレベル 4. 機械が危ないときに他の人が近づく可能性。2. の情報がない場合は、製造者は一般的な情報(例えば、身長や体重など)で考えます。
- 機械が故障したときなどに必要な操作や手順
- 機械の使い手の性別や年齢、左右どちらの手で使うか、身体的な特徴
- 例えば、目や耳の状態、体型、体力など
- 機械を使う人の訓練や経験、能力のレベル
- オペレーター
- 保守や技術者
- 見習いや初心者
- 一般人
- 機械に関係する危険なものに第三者が触れる可能性
- 隣の機械を使っている人など、危険なものを知っていると思われる人
- 管理者など、危険なものは知らないが、現場の安全ルールや決められた道順は知っていると思われる人
- 訪問者や子供など、機械や現場の安全ルールについてほとんど知らないと思われる人
空間上の制限
- 機械の可動範囲
- 作業領域
- オペレーター-機械の位置関係
- オペレーター-インターフェイス
時間上の制限
- 機械や部品がどれくらい使えるか、どんな間違いが起こりやすいか
- どのくらいの間隔で点検や修理をするか
- 機械や部品がどれくらい使われるか、どんな間違いが起こりやすいか
- どのくらいの間隔で点検や修理をするか
その他の制限
- どんな材料を使えるか
- どれくらいきれいにしなければならないか
- どんな場所や気温で使えるか、日光やほこりや湿気に強いかどうか
- どれくらいきれいにしなければならないか
- どんな場所や気温で使えるか、日光やほこりや湿気に強いかどうか
保護クラスとは、電気機器の感電に対する保護の分類のことです。各保護クラスは、基礎絶縁、二重絶縁、強化絶縁、接地などの方法で、ユーザーが危険な電圧に触れることを防ぐように設計されています。例えば、クラスI の電源は、基礎絶縁と接地された導電性シャーシの二重の保護 (PELV) を備えています。クラスII の電源は、基礎絶縁と補助絶縁の二重絶縁か、強化絶縁の一重絶縁 (SELV) を備えています。クラスIII の電源は、入力電圧が安全特定低電圧 (ELV) であるため、保護は不要です。
JIS ハンドブック 72 機械安全(2022) [ 日本規格協会 ]リスクアセスメント担当者や機械・電気回路設計者・EHS担当者にとって重要な規格が網羅されていて必携です。
JIS ハンドブック 72 機械安全 危険源の同定危険源の同定は、この規格の中で重要なプロセスとして説明されています。危険源の同定とは、機械に関連する危険な現象や状況を特定することです。英語で「同定」とは identification (identify) と表されています。identification とは、何かを見分けることや認めることを意味します。
危険源 hazard「危険源 hazard」とは、「危害を引き起こす潜在的根源」と定義されています。この定義に基づいて、機械の安全性を評価する、つまり、リスクアセスメントをする際には、まず危険源を同定し、その危険源から発生する危険状態 hazardous situation とリスク risk を分析する必要があります。
危険源は、人や物に対して傷害や損害を与える可能性があるものと理解できます。例えば、機械の動く部分や高温の表面、電気的なエネルギー、有毒な物質などが危険源となり得ます。危険源は、機械の設計や製造、運用や保守などのライフサイクルの各段階で発生したり、変化したりすることがあります。危険源は、機械の動作や環境によって変化する可能性があるため、常に監視し、適切な対策を講じることが重要です。ISO 12100 では、危険源の種類として、機械的、電気的、熱的、騒音、振動、放射、材料、人間工学などが挙げられています。
危険源の例ISO 12100 付属書B には「危険源,危険状態及び危険事象の例」が紹介されています。この附属書は、危険源、危険状態、および、危険事象の例をリストで示しています。これらの概念を明確にすることで、危険源を同定し、リスクアセスメントをする人を支援しています。このリストが全てでもありませんし、優先順位もありません。設計者は、機械にある他の危険源、危険状態、または、危険事象も見つけて文書化する必要があります。
ISO 12100 附属書B 危険源の例 機械的危険源
ISO 12100 附属書B 危険源の例 電気的危険源
ISO 12100 附属書B 危険源の例 熱的危険源
ISO 12100 附属書B 危険源の例 騒音危険源
- 1 機械的危険源
- 2 電気的危険源
- 3 熱的危険源
- 4 騒音による危険源
ISO 12100 附属書B 危険源の例 振動
ISO 12100 附属書B 危険源の例 放射
ISO 12100 附属書B 危険源の例 材料
ISO 12100 附属書B 危険源の例 人間工学の無視
- 5 振動による危険源
- 6 放射による危険源
- 7 材料・物質による危険源
- 8 人間工学原則の無視
リスクアセスメントシートに記入するときは記号で表してみるのもいいかもしれませんね。例1N6 機械的危険源 回転要素 巻き込み2F6 電気的危険源 過負荷 火災
同定危険源の同定は、リスクアセスメントの基礎となります。リスクアセスメントでは、危険源が発生する確率とその影響度を評価し、リスクのレベルを判断します。リスクが高い場合は、リスク低減策を講じます。ISO 12100 危険源の同定は、機械の安全性を向上させるために必要不可欠な作業です。
- 機械の全ライフサイクルにおける人の介入
- 機械で起こる可能性のある状況
- オペレーターの意図しない挙動又は合理的に予見可能な機械の誤使用
- 設定(段取りなど)
- 試験
- ティーチング、プログラミング
- 工具、工程の切替え
- 起動
- 全ての運転モード
- 機械への材料供給
- 機械からの製品の取出し
- 正常停止
- 非常事態の場合の機械の停止
- 機械異常からの復帰
- 計画外停止後の再起動
- 不具合(障害)の発見、トラブルシューティング(オペレーターの介入)
- 清掃・維持
- 予防保全
- 事後保全
- 機械は、意図された機能を果たす(機械は正常に作動する)
- 機械は、次を含む多様な理由で意図された機能を果たさない(すなわち、機能不良である。)
- 加工材料、ワークピースの特性、寸法の変化
- 構成部品、機能の一つ(または複数)の故障
- 外乱(例えば、衝撃、振動、電磁妨害)
- 設計誤り、設計不具合(例えば、ソフトウェアのエラー)
- 動力供給異常
- 周囲の状態(例えば、損傷した床の表面)
- オペレーターによる機械の制御不能(特に、手持ち機械、移動機械)
- 機械を使用中に機能不良、事故、故障が生じたときの人の反射的な挙動
- 集中力の欠如、不注意から生じる挙動
- 近道行為をとった結果として生じる挙動
危険源の同定 練習
この機械には「回転するベルトや滑車に手や髪の毛などが巻き込まれる危険」があります。これは「機械的危険源」の一種です。この時、危険源は ISO 12100 付属書B の表より「1. 機械的危険源」「N 回転要素」「6 巻き込み」と同定されます。「1N6」という記号で表されます
- ベルトや滑車を完全に覆う固定式ガードを設置する。
- ガードにはロック式保護インターロックなどの安全装置を付けて、機械が停止している時にしか開けられないようにする。
- オペレーターにはベルトや滑車に近づかないように注意喚起する。
- オペレーターには手袋や長袖などの巻き込みを防ぐ服装を着用させる。
- オペレーターには非常停止ボタンなどの非常対応手段を教育する。
以上のように、危険源の同定と予防策の提案は、機械の安全性を向上させるために重要な作業です。ISO 12100 付属書B の表は、危険源の同定に役立つ参考資料ですが、それだけでは十分ではありません。実際の機械の使用状況やオペレーターの行動を考慮して、適切な予防策を選択する必要があります。
ここまでお読みくださりありがとうございます。次回は 「ISO 12100 リスクの見積もり」へ進みます。