電気回路の基礎
電気回路の解析である回路理論、特に交流回路の理解は簡単ではありません。当サイトでは電気回路の理解に必要な基礎について説明します。
このとき、 R は抵抗の値を表します。「抵抗」とは、その名の通り電流の流れに対して抵抗となる素子です。つまり、抵抗の値 R は電流の流れを妨げる度合いを表しています。直流回路に関しては式(1) を理解できれば十分なのですが、先ほど述べたように回路理論を統一的に理解したいのであれば抵抗に加えてコンダクタンスの考え方を理解する必要があります。コンダクタンスは抵抗の逆数で G=1/R と表されます。そうすると式(1) は下式(2) のように表すことができます。
詳細はこのページの「4. 回路理論における直流回路の計算」で述べますが、抵抗とその逆数であるコンダクタンスを用いた式(1) と式(2) を用いることにより、電気回路の計算をパズルのように解くことができます。このことは交流回路の計算方法にもつながることですので、電気回路の”基礎の基礎”として覚えておいてください。
次に、交流回路の基礎について説明します。交流回路では角速度(または角周波数ともいう) ω 、振幅 A の正弦波交流(サイン波)の入力 A×sin(ωt) に対して、出力がどのようになるのかを解析します。 t は時間を表します。交流回路で扱う素子は抵抗に加えて、容量(コンデンサ)やインダクタ(コイル)といった素子が登場します。それぞれの回路記号は以下の図1 のように表されます。
これらの素子で構成された回路は、正弦波交流の入力 A×sin(ωt) に対して振幅と位相のみが変化するというのが特徴です。つまり交流回路は、図2 の上図のような入力に対して、出力の振幅の変化と位相のずれのみが分かれば入力と出力の関係が分かるということになります(図2 の下図)。
図2. 入力に対する位相と振幅の変化
ちなみに角速度(角周波数) ω (単位:rad/s)と周波数 f (単位:Hz)の関係ですが、下式(3) のように表されます。
また、周期 T (単位:s)は周波数 f の逆数であるため、下式(4) のように表されます。
先ほども述べた通り、交流回路では入力に対する出力の振幅と位相の変化量が分かればよく、交流回路の計算では複素数を用いて振幅と位相の変化量を求めます。この複素数を用いることによって交流回路の計算は非常に簡単なものになるのです。
3. 直流回路の計算
本節の「1. 電気回路(回路理論)とは」で述べたように、回路理論では直流回路の計算において抵抗に加えてコンダクタンスという考え方が出てきます。ここではコンダクタンスの話をする前に、まずは中学校、高校の理科で学んだことを復習してみましょう。
図3. 抵抗で構成された直列回路と並列回路
中学校、高校の理科では、抵抗と電流、電圧の関係であるオームの法則を学んだと思います。オームの法則は V = R × I で表されます。図3 の回路を解いてみます。同図(a) は抵抗が直列に接続されていています。まずは合成抵抗を求めます。A点-B点間の合成抵抗 R total は下式(5) のようになります。
直列に接続された抵抗の合成抵抗は、単純に抵抗値を足すだけで求めることができます。よって図3 (a) の回路に電圧 V を与えたときに流れる電流は下式(6) のように求められます。
一方、図3 (b) は抵抗が並列に接続されています。C点-D点間の合成抵抗 R total は下式(7) のように求めることができます。
並列に接続された抵抗の合成抵抗についてですが、各抵抗の逆数 1/R1 、 1/R2 、 1/R3 の和は合成抵抗の逆数 1/R total となります。よって、合成抵抗 R total は下式(8) となります。
図3 (b) の回路に電圧 V を与えたときに流れる電流は下式(9) のように求められます。
4. 回路理論における直流回路の計算
回路理論では、いくつかの「決まり事」を用いてパズルのような感じで電気回路の計算を行うことができます。このことは交流回路の計算にも通じることです。まずはパズルのように解く方法を、直流回路の計算で習得しましょう。
まずは、コンダクタンスという考え方を理解しましょう。コンダクタンスは抵抗 R の逆数で、コンダクタンスを G とすると G=1/R となります。式(7) をコンダクタンスを用いて表すと以下のようになる。
決まり事(1) ・・・ 求めるものが電圧か電流かで合成抵抗 R total か合成コンダクタンス G total のどちらを求めるか決める。 ・ 求める値が電圧の場合 : V = R total × I の合成抵抗 R total を求める。 ・ 求める値が電流の場合 : I = G total × V の合成コンダクタンス G total を求める。
決まり事(2) ・・・ 直列接続なら合成抵抗、並列接続なら合成コンダクタンスを求める。 ・ 抵抗が直列接続されている場合 : 合成抵抗 R total = R1+R2+R3+・・・ を求める。 ・ 抵抗が並列接続されている場合 : 合成コンダクタンス G total = G1+G2+G3+・・・ を求める。
決まり事(3) ・・・ 抵抗 R とコンダクタンス G の変換は、お互いを逆数にする。( R = 1/G , G = 1/R )
それでは、以上の決まり事を使って図3 の回路をもう一度解いてみましょう。同じ回路を図4 に示します。
まず図4 (a) について解いてみます。電圧 V が与えられており、求めるものは電流 I であるため「 決まり事(1) 」より I = G total × V の G total を求めます。つまり、A点-B点間の合成コンダクタンス G total を求めます。
次に、A点-B点間の抵抗 R1, R2, R3 に注目します。抵抗は直列に接続されているため、「 決まり事(2) 」より合成抵抗 R total を求めます。 R total = R1 + R2 + R3 となります。
さて、始めに「 決まり事(1) 」より、求めるものが電流 I であることから合成コンダクタンスを求めると述べました。そこで「 決まり事(3) 」を使って合成抵抗 R total = R1 + R2 + R3 を合成コンダクタンスに変換します。合成コンダクタンスは下式(11) となります。
よって、 I = G total × V に式(11) を代入することにより、式(6) と同じ式を得ることができます。
次に図4 (b) について解いてみます。こちらも「 決まり事(1) 」より I = G total × V の G total を求めます。そしてC点-D点間の抵抗 R1, R2, R3 に注目すると、並列に接続されているため「 決まり事(2) 」より合成コンダクタンス G total は G total = G1 + G2 + G3 となります。よって、 I = G total × V より下式(12) が求まります。
式(12) に G1=1/R1, G2=1/R2, G3=1/R3 を代入すると、式(9) と同じ式を得ることができます。
回路理論の計算は理解できたでしょうか?それでは最後にもう一つ、図5 (a) の回路を解いてみましょう。
この図5 (a) の回路は電流 I が与えられており、求めるものは電圧 V であるため「 決まり事(1) 」より V = R total × I の R total を求めます。つまり、A点-C点間の合成抵抗 R total を求めることになります。
まず、B点-C点間の抵抗 R2 、 R3 に注目します。並列に接続されているため、「 決まり事(2) 」より合成コンダクタンスを求めます。B点-C点間の合成コンダクタンス G 2,3 は下式(13) のようになります。
そうすると、合成コンダクタンス G 2,3 は図5 (b) のように1つの抵抗と考えることができます。ここで、「 決まり事(3) 」を使って合成コンダクタンス G 2,3 を抵抗 R 2,3 に変換します(式(14) )。
次に、A点-C点間の抵抗 R1 と 式(14) の R 2,3 に注目すると、直列に接続されていることが分かります。よって、「 決まり事(2) 」より合成抵抗 R total を求めればよく、 R total = R1 + R 2,3 となります。
始めに、「 決まり事(1) 」より求めるものが電圧 V であることが分かっていますから、 V = R total × I を求めます。そうすると下式(15) を得ることができます。
最後に、式(15) に G2=1/R2 、 G3=1/R3 を代入し下式(16) を得ます。