アーク溶接作業と作業主任者選任
アーク溶接作業と作業主任者選任

アーク溶接作業と作業主任者選任

アーク溶接作業に作業主任者の選任は必要です。ただ、その法的な根拠が分かりにくいため、必要がないと誤解していおられる方も少なくないようです。ここでは、法律上の条文の根拠について解説しています。

【2022年12月26日追記/2023年04月03日改訂】2022年12月26日厚生労働省は「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令及び化学物質関係作業主任者技能講習規程の一部を改正する件」についてパブコメを行い、同年4月3日に労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(化学物質関係作業主任者技能講習規程等)を公布しました。現時点ではアーク溶接作業を行うためには、特定化学物質及び四アルキル鉛作業主任者講習を修了した者の中から作業主任者を選任しなければなりませんが、これを講習科目を金属アーク溶接等作業に係るものに限定した特化技能講習(金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習)を受講すればよいこととすることとしています。

1 アーク溶接作業の作業主任者の選任の要否についての質問

2 関連条文

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し(中略)なければならない。

第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

十八 別表第三に掲げる特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業及び同表第二号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に係るものを製造し、又は取り扱う作業で厚生労働省令で定めるものを除く。)

別表第3 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)

34の2 溶接ヒューム

37 1から36までに掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの

第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

令別表第三第二号37の厚生労働省令で定める物は、別表第一に掲げる物とする。

第27条 事業者は、令第六条第十八号の作業については、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習(特別有機溶剤業務に係る作業にあつては、有機溶剤作業主任者技能講習)を修了した者のうちから、特定化学物質作業主任者を選任しなければならない。

別表第1 (第二条、第二条の二、第五条、第十二条の二、第二十四条、第二十五条、第二十七条、第三十六条、第三十八条の三、第三十八条の七、第三十九条関係)

一~三十四の二 溶接ヒュームを含有する製剤その他の物。ただし、溶接ヒュームの含有量が重量の一パーセント以下のものを除く。

三十四の三~三十七 (略)

アーク溶接の作業は、「溶接ヒュームを取り扱う作業」に該当するため、冒頭の質問にあった 屋内作業に限らず 、作業主任者の選任が必要になる (※) のである。

3 いくつかの疑問点について

この点について、この法令改正の施行通達「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行等について」(令和2年4月 22 日基発 0422 第4号)も明確なことは述べていない。この施行通達はたんに「 溶接ヒューム及び塩基性酸化マンガンに係る作業又は業務について、新たに作業主任者の選任(法第14条関係)(中略)が必要となること 」としているのみで、アーク溶接作業が「溶接ヒューム及び塩基性酸化マンガンに係る作業又は業務」かどうかということについては、何も述べていないのである。

しかし、これは行政機関に当てた通達という文書の性格からこのような書き方をしているのであり、厚労省が一般向けに作成した「改正特定化学物質障害予防規則に関するQ&A」では、明確に「 アーク溶接作業に労働者を従事させる場合は同作業主任者の選任が必要となります 」と明言している。

【改正特定化学物質障害予防規則に関するQ&A】

2 特定化学物質作業主任者について(改正安衛令第6条第18号関係)

問① 溶接ヒュームが特定化学物質になることにより、新たに特化作業主任者の選任が必要となるが、常時溶接作業を行わないような場合でも特化作業主任者の選任が必要となるのか。 特定化学物質作業主任者の選任は対象の作業頻度の程度による例外は設けておらず、アーク溶接作業に労働者を従事させる場合は同作業主任者の選任が必要となります。

また、一般向けのパンフレット「「溶接ヒューム」が特定化学物質に!」でも「 アーク溶接等作業を現場で指揮する方は「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した方を作業主任者として選任する必要があります 」と明記している。

※ なお、上記のパンフレットには「 「金属アーク溶接等作業」には、作業場所が屋内又は屋外であるとに関わらず、アークを熱源とする溶接、溶断、ガウジングの全てが含まれ、燃焼ガス、レーザービーム等を熱源とする溶接、溶断、ガウジングは含まれません。なお、自動溶接を行う場合、溶接中に溶接機のトーチに近づく等、溶接ヒュームにばく露するおそれがある作業が含まれ、溶接作業に付帯する材料の搬入・排出作業等は含みません 」とされている。

4 結論

以上のことから、法令では「アーク溶接作業」に、 直接 、作業主任者を義務付けているわけではないが、結果的に作業主任者の選任が必要となるわけである。

5 【追記】アーク溶接作業主任者制度の創設

【2022年12月26日追記】(2023年03月03日最終改訂)

(1)金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習の創設

厚生労働省によれば、アーク溶接業務に携わる者は、「 溶接ヒュームしか取り扱わないにもかかわらず、特化技能講習においては溶接ヒューム以外の特定化学物質及び四アルキル鉛に係る科目を受講する必要がある等、受講者の負担が大き 」いため「 講習科目を金属アーク溶接等作業に係るものに限定した特化技能講習(以下「金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習」という。)を新設 」するというのである。

(2)金属アーク溶接等作業主任者制度の変遷 (3)簡易な技能講習を創設することの問題点 ア 作業主任者制度に対する国民の信頼感の低下

おそらく アーク溶接業務を行っていながら作業主任者を選定していない事業者の多くは、新しい金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習が2024年1月に始まってから技能講習を受けさせて作業主任者を選定すればよいと考える だろう。関係告示が行われた2023年4月3日の後、新たな技能講習が実施される2024年1月1日までに、作業主任者を選任せずにアーク溶接を行っている事業者がいた場合、労働基準監督官がこれを現認したときはどのように対応するのか気になるところではある。

イ 作業主任者制度のバランスの欠如

Copyright © 2016- 柳川 行雄 All Rights Reserved.