孔雀の主題による変奏曲(コダーイ)
ゾルダン・コダーイ(Zoltan Kodaly, 1882~1967)作曲の『孔雀(くじゃく)の主題による変奏曲』(別名:ハンガリー民謡「孔雀は飛んだ」による変奏曲, Variations on a Hungarian …
冒頭の主題提示から、 シャープさとふくよかさを兼ね備えた弦楽器がとても素晴らしい です。ハンガリー国立交響楽団は、あまり機能的に優れたオケではないかも知れませんが、やはり民族的な色彩を良く備えていて、独特のふくよかさと土の香りが感じられます。変奏にはいってからも、 民族的な響きはそのままに結構レヴェルの高いアンサンブル をしています。録音は1990年で音質も良いですね。残響が少し長いですが、民族的な響きを味わうには良いです。テンポは比較的余裕を持ったもので、このオケの響きを良く味わえます。
第11変奏に入ると、凄く味わいがある演奏になります。少しアクセントが弱めだったり、技術的に今一つ、ということもありますが、ハンガリーのオケの場合はご愛敬ですね。それにしても、 この味わい深さはやはり地元ハンガリーのオケにしか出せないものですね。フルートのソロは、とても素晴らしいです。響きが良いことも良い方向に作用しています。 フルートのブレスが直接聴こえるわけでは無いですが、息継ぎのタイミングまで良く聴こえるような音質の良さです。テンポが速い所はかなり速く、遅い所は凄く遅くスケールが大きな演奏になっています。金管が少しパワー不足ですが、弦楽器は幅広いサウンドで、とても素晴らしいです。土の香りを堪能できます。最後はリズミカルで良いですが、打楽器が弱い感じです。何にせよ、ハンガリー国立管弦楽団はレヴェルアップしている気もしますし、民族的な響きは全く失っていないですね。それを十二分に堪能できる演奏です。
こういう民族的な演奏は、凄く好物なのですよね。それにこの演奏は孔雀変奏曲の新しい魅力を掘り起こしてくれています。凄く味わい深いですし、感動的でもあります。 スタンダードの演奏として相応しい名盤です。
ネーメ・ヤルヴィ=シカゴ交響楽団 民族的な味わいとシカゴ響のテクニック指揮 ネーメ・ヤルヴィ 演奏 シカゴ交響楽団
ネーメ・ヤルヴィが珍しくアメリカの実力派オケであるシカゴ交響楽団を指揮したCDです。 ヤルヴィとシカゴ交響楽団の相性はまあまあ 、というところでしょうか?普段のネーメ・ヤルヴィはあまり細かい所は詰めないで、少し響きが緩くなっている場合が多いのですが、それは普段のオケの実力がシカゴ交響楽団ほどではないことと、ヤルヴィの個性でしょうね。シカゴ交響楽団は細かいところまで指揮者について行こうとしますからね。
実際に聴いてみると、普段のネーメ・ヤルヴィともシカゴ響とも少し違ったサウンドで独特の味があります。ネーメ・ヤルヴィの民族的で絶妙なテンポどりは健在です。シカゴ響の手にかかると、アバウトにならずに、そのテンポでしっかり演奏しています。ちょっとしたミスマッチを感じますが、 ソロなどはとても良いですし、重量級のオケなので弦楽器のトゥッティもダイナミックに響きます。 変奏が進むにしたがって、異様な雰囲気が盛り上がり、民族的でエキゾチック になっていきます。シカゴ響は甘くなることはなく、最後の盛り上がりもビシッと決めています。
録音も優秀 です。普段のネーメ・ヤルヴィとはちょっと違いますが、雰囲気と言い、リズム感と言い、 独特で民族的で味わい深い名盤 です。
ファレッタ=バッファロー・フィル指揮 ジョアン・ファレッタ 演奏 バッファロー・フィルハーモニー管弦楽団
女流指揮者のジョアン・ファレッタとバッファロー・フィルの録音です。 最近の録音でとても高音質 です。バッファロー・フィルはオーケストラとしての機能が高く、さすがアメリカのオケです。
デュトワ=モントリオール交響楽団 民族的な色彩を帯びた透明感のある響き指揮 シャルル・デュトワ 演奏 モントリオール交響楽団
デュトワの『孔雀の主題による変奏曲』には驚きました。非常に透明感が高くて、サウンド的には合うだろうと思ってはいたのですが、 こんなにも味わいのある名盤だとは思ってもみませんでした 。この組み合わせでのレスピーギのローマの3部作も近い雰囲気を持った名盤で、たまに凄いCDがあるんですよね。
最初のモデラートの弦セクションによる主題の提示からして、極めて透明度が高くパープの音が不思議な空間へと誘います。テンポの速い曲もしっかりエッジが立っていて物足りないということはありません。響きが非常に豊富でちょっと響き過ぎな印象ですけど、とても清潔な響きです。 民族的な曲もリズミカルで楽しめます。 変奏が進んで感情的に盛り上がる部分もかなり良いです。
ケルテス=ロンドン交響楽団 細かい表情付け、スタンダードな名盤指揮 イシュトヴァン・ケルテス 演奏 ロンドン交響楽団
指揮のイシュトヴァン・ケルテスはハンガリー人で、コダーイ本人に直接師事しています。なので、師匠の最大の傑作である孔雀変奏曲は外せないですね。 この曲の定番の位置づけのディスク です。
冒頭は シャープでダイナミックな主題提示 です。感情も入っている演奏で、最初から情熱を感じます。響きの作り方が丁寧で、1964年の録音とは思えない録音の良さもあって、透き通った感じすらします。もっともダイナミックな個所は少し荒い感じになってしまいますけど。変奏に入ると丁寧に的確なテンポ取りで進んでいきます。随所で情熱的な個所が出てきます。前半の変奏は ロンドン交響楽団のダイナミックでレヴェルの高いアンサンブルを活かして、聴きごたえのある演奏 を聴かせてくれます。やはり、師匠の直伝だからか、迷いが無いですね。
第11変奏以降は、かなりテンポを遅くすると共に感傷的な音楽になっていきます。味わい深い演奏です。12変奏では感情的にかなり盛り上がります。葬送行進曲も味わい深いです。この演奏は感情は結構出していますが、暗さやクールさはないですね。 フルートとハープのアンサンブルもとてもレヴェルが高い です。フルートの演奏は鮮やかなだけではなく、味わい深いです。 細かい表情付けや発音まで良く練られている と思います。テンポが速くなると結構ダイナミックで速いテンポ取りです。そして、主題が戻ってくる所は思い切り遅いテンポでダイナミックに演奏していて、感動的です。最後もリズミカルにかなり速めのテンポで終わります。
ハンガリーの天才指揮者によるスタンダードの名盤 ですね。何かの参考にするにはこのディスクか、デュトワ盤が良さそうです。筆者は少し個性的なタイプの演奏が好きなのですが、普通のサイトなら一番良い評価でもおかしくないです。
ショルティ=ロンドン・フィル メリハリの良くついたスリリングな演奏指揮 ゲオルグ・ショルティ 演奏 ロンドン・フィルハーモニック
ショルティとロンドン・フィルの録音です。ハンガリー人のショルティはコダーイを得意としつつもレコーディングとなるとあまり数が無く、この録音も1954年のモノラル録音です。
冒頭の 主題提示はスケールが大きく いい感じに始まります。変奏に入ると最初のほうの変奏ではテンポが速いです。他の演奏で慣れていると少しびっくりしますが、シャープで聴きやすいかも知れません。その後もはっきりしたリズミカルな変奏が続きます。
変奏11あたりで、急にテンポが遅くなります。 とても味わい深くなってきます。 メリハリの大きな演奏ですね。ここから葬送行進曲までとてもじっくり味わえます。クオリティの高い演奏です。その後、 フルートとハープの変奏に入りますが、とても良い演奏です。ソロも素晴らしい ですし、ここまでのアンサンブルも文句のつけようがありません。次の変奏では急にテンポが速くなります。切り替えが素早いですね、シャープな響きです。その後、また遅くなって弦楽器のところは、かなり音質の良さを感じます。また速いテンポに戻ると スピーディで気分の良い演奏 です。力強さもあり、とても良いです。そして主題が戻ってきてスケールが大きくなると、音の厚みが素晴らしいです。 最後のスピード感もよくスリリング です。
ドラティ=フィルハーモニア・フンガリカ ハンガリーのオケらしいふくよかな響き指揮 アンタル・ドラティ 演奏 フィルハーモニア・フンガリカ
アンタル・ドラティとフィルハーモニカ・フンガリカの録音です。弦セクションによる雄大な主題提示は、ドラティらしく落ち着いたテンポで、 ふわっとしたフィルハーモニア・フンガリカの響きを上手く生かした豊かな響き です。
コンブリオ、ヴィーヴォはスタンダードなアプローチだと思います。ヴィーヴォのヴァイオリンの響きはシャープになることもありますが、このオーケストラらしいふわっとした感じは常に失われません。アンダンテ・エスプレッシーヴォに入ると、段々と深みが増してきて、とても味わい深くなります。特にシリアスになりすぎることはなく、良い雰囲気を保っています。第12変奏ですが、他のCDに比べると少し精度に欠けるような気がします。葬送行進曲はそれほど重くはなく、シリアスさもそれほどではありません。なので対比の効果が薄いのですけど、その後の フルートのソロの絡み合いは、程よい柔らかい響きの中でとてもハイレヴェル です。ハンガリーらしい響きでもあります。フィナーレは落ち着いたテンポで、弦セクションによる主題の再現はふくよかな響きで良いです。なかなかいい感じで終わります。
全体としては、悪くはないのですが、アンサンブルの精度に欠ける所がありますね。大らかさがハンガリー人らしい、とも言えますけれど、それをどう見るかがポイントです。録音はこの時代としては、とても良いと思います。
レーヘル=ブダペスト交響楽団指揮 ジェルジ・レーヘル 演奏 ブダペスト交響楽団
レーヘルとブダペスト交響楽団の録音です。冒頭の主題提示は弱めに始まって、段々強くなっていく感じです。低音がしっかりしているのはレーヘルらしいです。古くてダイナミックレンジが狭いのかと思いきや、変奏に入ると結構音質は良く適度な残響もあって聴きやすいです。
ブダペスト交響楽団は、なかなか民族的ですが 、他のハンガリー系のオケにあるふわっとした量感があまり感じられず、 代わりに土の香りがとても強いです。 レーヘルの個性の強さもあるかも知れません。結構厳しい指揮をしている感じがします。前半の変奏はテンポは基本速めですが、味わいのある所はじっくり聴かせてくれます。
第11変奏以降は、感情的に深くなり、「わが祖国」をチェコ人が演奏するような感じです。もともと、そういう性格のある曲ですから、その方向は良いです。オケの技術的なところは今一つなところもあるのですが、そこはあまり気になりません。 音楽への共感の度合いが高い名演 です。葬送行進曲は、音楽の底に強い意志が感じられます。
全体として、 レーヘルの演奏は民族的な響きが強くでていると共に、曲への共感がとても強い演奏 だと思います。ケルテスとは、録音年代は近いですが、全く違うタイプの名盤です。
リーパー=スロヴァキア放送ブラティスヴァ交響楽団指揮 エイドリアン・リーパー 演奏 スロヴァキア放送ブラティスヴァ交響楽団
ナクソスのディスクは、隣国スロヴァキアのオーケストラですね。スロヴァキアもかなり土の香りが強いオケが多いです。
冒頭はなかなかスケールのある主題提示で良いですね。前半の変奏は、意外に軽快に進んでいきます。テンポも速めで技術的にも意外にレヴェルが高いです。きれいな演奏ですが、やはりハンガリーのオケのほうが曲に対する共感度は高そうです。第11変奏からは、凄く遅いテンポになります。味わい深いと共に少しグロテスクさがあって、この表現はいいですね。葬送行進曲のあと、フルートのソロは素晴らしいです。やはりこの辺りはテンポが遅めな方が良いですね。でも、意外に中途半端なテンポの演奏が多いのです。それは意味があってのことでしょうけど。テンポが速くなると、結構レヴェルの高いアンサンブルを聴かせてくれます。変奏主題が戻ってくる個所はとてもきれいなアンサンブルで素晴らしいです。特にハープが効果的に使われています。テンポアップして最後ですが、リズミカルで良いです。パーカッションが弱いのはハンガリーのオケと一緒ですけれど。
ラインスドルフ=ボストン交響楽団 録音が良くないが、味わい深い演奏指揮 エーリヒ・ラインスドルフ 演奏 ボストン交響楽団
ラインスドルフ盤はボストン交響楽団の実力もあって、なかなかの名盤 だと思います。ただ、ちょっと録音が古いですね。ヤルヴィ盤やドラティ盤で弦セクションが盛り上がる個所なども、ダイナミクスに欠けるように思います。ただ、XRCDなど音質を改善してある場合は、大分違う可能性がありますけど。
内容は、かなり良いと思います。特にテンポ取りはゆっくりめで他のCDに比べてもじっくり味わえます。ラインスドルフはこの曲にとても共感していて、聴かせるところを大きなスケールで、聴かせてくれるので、満足感は高いです。遅めのテンポで進み、余分な演出はありません。それでも曲の力が大きいので、良い結果になるということでしょうね。
アルパード・ヨー=ブダペスト・フィル 良い演奏だが、録音が悪いのが残念指揮 アルパード・ヨー 演奏 ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団
指揮者のアルパード・ヨーはハンガリー人で、コダーイ自身から教育を受けたようです。
冒頭の主題提示の弦楽セクションの響きが大変良く て驚きました。もしやかなりの名演か?と思ったのですが、どうも古い録音なのか、ダイナミックな個所では急に平板になってしまいます。おそらく演奏自体はなかなか良いと思います。
テンポ設定が自然でとてもよく、『孔雀の主題による変奏曲』に対する思い入れが感じられます。これで録音が良ければ、かなりの名盤だったと思いますが、惜しいですね。
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